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2014/09/05

言葉に惑わされない

海外在住者として私が感じる日米間の違いの中に、言葉の捉え方があります。

たとえば、一時期日本で「CSRからCSVへ」といった論調の記事をよく見かけました。

ご存知の通り、CSRは企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)であり、CSVはマイケル・ポーター教授が提唱した、共通価値の創造(Creating Shared Value)のことです。

詳細は教授の論文やメディアの記事を見て頂ければと思いますが、ざっくりと言えば、ポーター教授の主張は、社会活動を責任と捉えるのではなく、機会として事業に取り入れ、社会問題を解決しながら企業利益を生む、つまり、企業価値と社会価値を共存させる、ということです。

素晴らしい概念ではありますが、アメリカでは、似たような意味を持つ言葉として「トリプル・ボトムライン(社会(People)・環境(Planet)・財務(Profit)のすべてで利益を生む)」や「自然資本主義(自然資本と人的資本を資本主義に取り入れる)」などがありますし、CSRは事業と無関係の慈善活動のみとは捉えられていないため、CSVという用語が特別注目されることはありませんでした。

2013/11/22

「買わないで」から「たくさん買って」に態度急変。迷走し始めたパタゴニア

環境先進企業として知られる、アウトドア・アパレルのパタゴニア。

一昨年の年末商戦では、不要な消費を抑えるため、自社の製品を「買わないで」と主張する新聞広告を出したほどです。その広告には、モノを生産するには大きな環境コストがかかることを知ってほしい、それはパタゴニアの製品だって同じこと、だからモノを買う前に必要かどうか考えて欲しいと記されていました (パタゴニアがサイバーマンデーに送付したメルマガの内容)

メディアや消費者はこの広告を大絶賛し、パタゴニアの人気は急上昇。皮肉なことに、「買わないで」と訴えた同社の売上は、その後1年で前年比30%増加しました。

その後も、「責任ある経済」キャンペーンを展開するなど、経済成長を前提とする資本主義を変えていこう、と主張してきた同社。

ところが、本日届いた同社のメルマガには、「3つ以上買うと20%引&送料無料」の文字が。

2013/09/25

パタゴニアの新広告、失敗の理由

ニューヨークコレクション真っ只中の910日、アウトドアアパレルのパタゴニアが、ニューヨークタイムズ紙に「新品よりも良い(Better than New)」という全面広告を掲載しました。

広告には、1994年から着続けられているというボロボロのサーフショーツの写真と共に、次のようなメッセージが書かれていました。

「ファッションウィークでは、新しいデザインに関心が向けられます。
私たちはもっと良いこと、すなわち「長持ちする」ことに注目したいと思います。
パタゴニアは製品の品質と機能性に自信を持っていますが、新たに製品を作ろうとすれば(他の人が作るものもすべてですが)、必ず自然界に負荷をかけることになります。そして、かけた負荷をどうやって取り戻せるのか、私たちは十分に理解していません。

そこでパタゴニアは、新しい製品だけでなく、古い製品にも注目することにしました。

2013/05/22

フラッキングを煽るメディアに誠実な対応、難燃性ウェアブランドのブルワーク

ハイドロフラッキングの環境・社会負荷が長いこと大きな問題になっている中(詳細はこちら)、先日、ウォールストリートジャーナル紙が、米国内石油ガス開発ブームに伴い、難燃性衣料「フラックウェア」業界が色めき立っている、という内容の記事を掲載しました(WSJ)。

この記事には、VFコープ傘下の難燃性衣料ブランド、ブルワークFRへのインタビューも掲載されていましたが、記事が掲載された2日後、同ブランドはブログ内でこの記事に対するコメントを発表。

2013/05/20

天からの贈り物:岩牡蠣の真珠


週末に、「Jiro Dream of Sushi」という映画を見て、どうしても寿司が食べたくなり、日曜だというのに急遽マンハッタンの寿司屋に予約して行きました。
寿司の前に、まずは岩牡蠣を頂いたのですが、口に入れると、ガリッと硬いものが。
驚いて取り出してみると、1mm程度の小さな乳白色の玉。
ゴミか何かと、訝しがっていると、カウンターにいた職人さんが「たぶん真珠のようなものだと思います」と。
まさか牡蠣から真珠が出来ると思わなかったので、本当ですか?と聞くと、
わざわざ厨房に行って確認してくれて、「店ではそういう玉を扱っていないので、やはりそうだと思います」とのこと。

せっかくなので家に持ち帰り、早速調べてみました。

2013/03/22

クラウド時代のファッションの形

かねてから、いずれファッションはウエブ上でオーダーメイドになるだろう(買い手が欲しいもののみを作り販売するようになる)と思っていたのですが、TeePublicにその片鱗を見たように思います。

TeePublicは、クラウドファンディング型のTシャツショップです。
不特定多数の「デザイナー」が、TeePublicのサイトに自分のデザイン(写真も可)をアップロードし、1カ月以内に30人以上の購入希望者を獲得するとTシャツとして製品化され、希望した人たちに販売されるという仕組みです。
一度製品化されると、永続的にそのデザインがサイトに掲載され、販売され続けます。
Tシャツは1枚20ドルで販売され、デザイナーは1枚販売される毎に5ドルのデザイン料を受け取ります。
Tシャツの型と素材は決まっているので、デザイナーはそこに描かれるグラフィックデザイン(色制限なし)と地色(1色のみ)を選ぶことができます。

TeePublicを「ブランド」と捉えるなら、ファッションブランドに「デザイナー」は必要なくなったということでしょう。

2012/07/12

プーマの環境志向

プーマのヨッヘン・ザイツ会長が、フィナンシャルタイムズ紙のインタビューで、将来的に革製品を扱わない可能性に言及しています(FT)。
具体的な発言は、次のとおり。

「いずれは革に代わる素材を見つけないとならないだろう。それについて疑問の余地はない。」
「我々皆で、肉の消費量を減らしていかなければならないし、革についても同じことだ。それが現実だ。」
「牛肉がCO2排出量増加に加担していることは、誰もが知っている。」
「ばかばかしいと思われるかもしれないが、革に似た合成素材で製品を作る経済的な方法はあるだろう。」

2012/03/22

H&M、ノニルフェノールの出所が判明したことを公表

昨年、グリーンピースが発行した報告書「ダーティーランドリー」にて、大手アパレル各社の多くの製品から内分泌かく乱物質とされるノニルフェノール(NPE)が検出されたことが発表され、それを受けて、プーマ、ナイキ、アディダス、H&Mなど大手アパレル各社がNPEを含む有害物質の使用禁止を表明しました(NYGF)。

その後日談として、先日、H&MがNPEの出所が判明したことを発表しました。 

2012/03/20

新リアリティTV「ファッションスター」から学ぶこと

サステナビリティとはあまり関係ないのですが、ビジネス的に興味深い事柄がありましたので、ご紹介したいと思います。

先週から始まった、サックス、メイシーズ、H&Mの3社がコラボする、NBC局の新ファッションリアリティTV「ファッションスター」。

デザイナー発掘番組という点では先駆けの「プロジェクトランウェイ」と似ていますが、ショー的要素が強い点で「アメリカンアイドル」などと類似、より深くビジネスが絡んでいる点でテレビショッピングと似ています。

番組では、全米各地から集まった14人の無名デザイナーが毎週服をデザインし、ダンサー達が踊る華やかなランウェイでプロのモデルによりファッションショー形式で見せ、3社のバイヤーが欲しいアイテムを入札します。
落札された商品は、番組終了直後から各店のウエブサイトで、翌日から店頭で販売されます。

落札されたデザイナーは翌週以降も番組に参加でき、誰からも入札されなかったデザイナーのうち毎週1名が失格となります。
最後まで勝ち抜いた1名のデザイナーは、600万ドル分の賞金(受注)を獲得し、3社用にカプセルコレクションをデザインします。

2012/02/17

エコブランド、ハウィ―ズのブランド買い戻しに学ぶ、企業の価値

年初に、イギリスのエコブランド、ハウィーズが、VFコーポレーションから自社ブランドを買い戻したことが発表されました。
同ブランドは、2006年にティンバーランドに買収され、昨年VFがティンバーランドを買収したことによりVF傘下となりました。
そして今年1月、同社ブログで以下のように発表しました。

「自分の足で立つ
1月1日付で、ハウィーズは再び小さくなりました。
2006年にティンバーランドに買収された時、私たちは20億ドル企業のほんの小さな一部となりました。そしてそれは容易なことではありませんでした。
昨年9月にVFがティンバーランドを買収し、私たちは100億ドル企業の極めて小さな一部となりました。
そして、誰もが大きな財務危機と闘っている最中、ハウィーズの経営チームは静かにビジネスを買い戻しました。
VFには、私たちが再び小さくなる機会を与えてくれたことに感謝しています。
小さくなったことは、大きな意味があるでしょう。」
(Howie's blogより)

2011/11/28

パタゴニアがサイバーマンデーに送付したメルマガの内容

今日は、サイバーマンデーという毎年サンクスギビング後の月曜に行われるネットショップの一斉大セールの日です。

今朝、パタゴニアからメールマガジンが届きました。
環境先進企業パタゴニアでも、消費主義の象徴のようなこの日にセールのお知らせを送るのかと訝りながらメールを開けると、同社のR2フリースの写真と「このフリースを買わないでください」というタイトルと共に、以下の文面がありました。

2011/11/05

サステナブルファッションの意義と矛盾

サステナブルファッションの意義や矛盾について考えさせられることが、最近いくつかありました。

ひとつは、ファッション業界紙WWDに掲載された、イードゥンの創始者であるU2のBONOとアリ・ヒューソン夫妻のインタビュー記事。

イードゥンは、アフリカに雇用を生み出すことを目的として設立されたサステナブルブランドです。
ルイ・ヴィトンなどを傘下に持つファッションコングロマリットLVMHに買収されて以来、デザインが洗練され、規模が拡大し、ハイエンドブランドの仲間入りを果たしました(詳細はこちら)。

同紙のインタビューで、”ファッションは表面的だと言う人がいるが、アフリカ支援という高い志を持って活動するあなたはどう思うか”と問われたヒューソンさんの発言が印象的でした。

2011/07/16

トムズ、アンチ・ゲイ団体への関与で不買運動に発展
~アメリカのビジネスと人権問題~

ひとつ買うとひとつ寄付される「ワン・フォー・ワン」ビジネスを構築したシューズブランドのトムズ(詳細はこちら)に対し、不買運動が起こりました。

事の発端は、創業者のブレイク・ミコスキー氏がキリスト教団体の”フォーカス・オン・ザ・ファミリー”で講演を行ったこと。
同団体は、同性愛や堕胎、離婚、フェミニズムなどに反対していることで知られており、そうした団体で講演を行うのは彼らの信念に賛同しているからだとして、ミコスキー氏とトムズに対する批判が起こったのです。
問題の引き金となったのは、同氏のブログに書き込まれたコメントです。
6月7日、ミコスキー氏がトムズのサングラス事業参入に関する記事を投稿したところ、多くの賞賛コメントに混じって、12日、同氏とフォーカス・オン・ザ・ファミリーとの関係を疑問視するコメントが書き込まれました(Start Something that matters)。
ミコスキー氏は賞賛コメントには返信したものの、そのコメントに対しては静観。
その後、フォーカス~の件に関する返信を促すコメントがいくつか書き込まれたものの、同氏が依然反応しなかったため、同団体との関係を黙認しているのではという議論に発展。
7月8日頃から同性愛支持者を中心に批判コメントが殺到し、他ブログでもトムズ批判や不買運動の呼びかけが行われるようになりました。
翌9日に、ミコスキー氏はブログ上で謝罪を表明。
同団体との関係性はないこと、同団体の信念の全容を知っていたら講演依頼を受けなかったこと、自身は人権・市民権の平等を信念としている旨を記載しました。

2011/06/14

VFコーポレーションのティンバーランド買収による、同社サステナビリティ文化への影響

昨日(6月13日)、VFコーポレーションによるティンバーランド買収が発表されました。

ティンバーランドは、サステナビリティ分野におけるリーディングカンパニーのひとつと見られている企業。
「人々に変化を起こさせる」ことをミッションに掲げ、グリーンインデックスという独自の指標で商品の環境負荷を測定、靴の箱に「栄養表示」として測定した負荷を表示、全社挙げての温室効果ガス削減対策(06年対比38%削減を実現)など、さまざまな環境・社会問題対策を行っています。

一方、VFコーポレーションはラングラー、リー、セブン、ヴァンズ、イーストパックなど20以上のブランドを抱える大手アパレル企業。
当然CSR対策は行っているものの、その内容はあくまで投資家向けと思われるもの。
2008年頃のグリーンブームの時期には、いくつかの傘下ブランドでオーガニック・リサイクル素材を積極的に取り入れていたものの、現在はサステナブル素材の商品はほとんど見られず、2005年に買収したReefという傘下ブランドで"Reef Redemption"というサステナブルイニシアティブを立ち上げたものの、こちらも現在は休眠状態。
多くのアウトドアブランドがサステナビリティに力を入れる中、傘下のノースフェイスでは、サステナブル活動を行ってはいるものの真剣味が感じられず、逆に売らんかなの姿勢が強く現れているように思います。
営利企業である以上仕方ないのかもしれませんが、同社の目標はあくまで業務拡大や売上増加であり、サステナビリティのことなどさほど真剣に考えていないように見受けられます。

2011/05/20

メッセのエコファッションイベント買収から考察する、サステナブルファッションの今後

ドイツの展示会主催・運営会社大手のメッセ・フランクフルトが、ベルリンのエコファッションイベント「グリーン・ショールーム」を買収したことを先日発表しました。
グリーン・ショールームとは、ドイツのベルリン・ファッションウィーク会期中に開催されるエコファッションのショーと展示会で、今年は7月6-8日にベルリン市内のホテルにて開催されるそうです。
メッセは、2010年にパリのエコファッションショー&展示会「エシカルファッションショー」を買収しており、これで2つのエコファッションショー・展示会を手中に収めたことになります。
エシカル~の買収の際もそうでしたが、展示会主催大手の同社が立て続けにエコファッションイベントを買収したことに、少なからず驚きを感じました。

なぜ驚いたのかというと、メッセは当然これらエコファッションイベントの将来性に期待して投資したのだと思いますが、私はそこに疑問を感じているからです。

そもそも、エコファッションというのは (サステナブルファッションでもグリーンファッションでもエシカルファッションでも名称は何でも構いませんが)、最終的にすべてのファッションがサステナブルになるまでの「一時的な」ものであり、そのような名称がつけられている限り、本質的な意味でサステナブルではないと私は考えています。
つまり、いずれ多くのファッションブランドがサステナブルになれば、敢えてエコファッションだけを集めたイベントを開催する必要がなくなると思うのです。
もちろん、そうなるためには時間が掛かりますが、既にその兆候は現れており、想定していたよりもかなり早い段階でエコファッションイベントの必要性がなくなるだろうと感じています。

実際、ここ数年、H&Mやウォルマートといった大規模な低価格小売、ナイキやアディダスなど大手スポーツブランド、ハイエンド・ブランドではステラ・マッカートニーやフィリップ・リム、ラルフローレン、トム・スコットなど、元々サステナブルをコンセプトにしていない一般的なブランドや企業が次々とサステナブルファッションに参入し、その規模を拡大しています。
グッチやバレンシアガを傘下に持つフランスのファッションコングロマリットPPRも、「PPR HOME」というサステナブル・イニシアティブを立ち上げており、大手ファッションブランドのサステナブル化が加速することは間違いないと思います。