グリーン・ショールームとは、ドイツのベルリン・ファッションウィーク会期中に開催されるエコファッションのショーと展示会で、今年は7月6-8日にベルリン市内のホテルにて開催されるそうです。
メッセは、2010年にパリのエコファッションショー&展示会「エシカルファッションショー」を買収しており、これで2つのエコファッションショー・展示会を手中に収めたことになります。
エシカル~の買収の際もそうでしたが、展示会主催大手の同社が立て続けにエコファッションイベントを買収したことに、少なからず驚きを感じました。
なぜ驚いたのかというと、メッセは当然これらエコファッションイベントの将来性に期待して投資したのだと思いますが、私はそこに疑問を感じているからです。
そもそも、エコファッションというのは (サステナブルファッションでもグリーンファッションでもエシカルファッションでも名称は何でも構いませんが)、最終的にすべてのファッションがサステナブルになるまでの「一時的な」ものであり、そのような名称がつけられている限り、本質的な意味でサステナブルではないと私は考えています。
つまり、いずれ多くのファッションブランドがサステナブルになれば、敢えてエコファッションだけを集めたイベントを開催する必要がなくなると思うのです。
もちろん、そうなるためには時間が掛かりますが、既にその兆候は現れており、想定していたよりもかなり早い段階でエコファッションイベントの必要性がなくなるだろうと感じています。
実際、ここ数年、H&Mやウォルマートといった大規模な低価格小売、ナイキやアディダスなど大手スポーツブランド、ハイエンド・ブランドではステラ・マッカートニーやフィリップ・リム、ラルフローレン、トム・スコットなど、元々サステナブルをコンセプトにしていない一般的なブランドや企業が次々とサステナブルファッションに参入し、その規模を拡大しています。
グッチやバレンシアガを傘下に持つフランスのファッションコングロマリットPPRも、「PPR HOME」というサステナブル・イニシアティブを立ち上げており、大手ファッションブランドのサステナブル化が加速することは間違いないと思います。
そんな中、サステナブル素材のみを使用しサステナブルな手法のみで生産する小規模な"サステナブルブランド"は、価格面では大手小売に太刀打ちできず、デザイン性や機能面ではハイエンドブランドや大手スポーツブランドに適わず、難しい立場に立たされています。
アメリカでは、サステナブルファッション初期の頃には多くの"サステナブルブランド"が立ち上がり、歓迎され、もてはやされましたが、現在は一部強力なバッカーがついているブランドを除き、多くがブランド閉鎖に追い込まれています。
その結果、アメリカ国内のエコファッション専門のショーや展示会は、縮小傾向にあるか、サステナブル度が低いブランドを取り入れて路線変更しつつあります。
この現象を見て、"エコファッションは終わった"などと言う方も時折いらっしゃいますが、そうではありません。
終わったのではなく、新たな局面に入ったということだと思います。
いわゆる"サステナブルブランド"は、初期にはサステナブルファッションの認知度向上のために非常に大きな役割を果たしてくれたのですが、現在はその役割を終え、資金力・デザイン力のあるブランドにバトンを渡したのです。
つまり、エコファッションが終わったのではなく、エコファッションを採用するメジャーブランドが急速に増えてきたため、認知度向上のために存在していた小さなエコブランドが役割を果たしたのだと、私は見ています。
もちろん、今でも現役で活躍している素晴らしいサステナブルブランドはたくさんありますし、新たにサステナブルブランドを立ち上げるデザイナーも大勢います。
その多くが真剣にサステナビリティを考えて実践していますし、デザイン性の高いブランドもたくさんあります。
ただ、今はサステナブルなだけで売れる時代ではありませんし、サステナブルであってもなくても言えることですが、本当に力(デザイン力、ビジネス手腕、資金力)のあるブランドやデザイナーなら成功するでしょうし、そうでなければ淘汰されてしまう、それだけのことだと思います。
また、初期にサステナブルブランドを立ち上げた方々はファッション以外のバックグラウンドを持つ人が多いので、真摯にサステナビリティを検討した結果、ファッションデザインを卒業して他分野へ移行する傾向もあるのではないかと思います。
一方で、大手企業が次々とサステナブルファッションに参入しているのは、環境・社会問題が深刻化する中、ファッションはサステナブルにならない限り存在意義を失っていくということを認識しているからだと思います。
そうでなければ、コストが掛かるうえに制約も多いサステナブルファッションに敢えて踏み込むことはしないでしょう。
食品やガソリンなど生活必需品の価格上昇は今後も加速するでしょうし、水などこれまであることが当たり前だった資源の争奪も始まると思います。そうなれば、ファッションの需要は減らざるを得ません。
それを食い止めるためにも、その原因である環境・社会問題を解決するビジネスを行わなければならないのです。
つまり、自らがファッションを縮小させる原因を作り出していることに気付き、その原因を取り除く努力をしなければ、ファッション業界に未来はないということです。
ファッションビジネスを存続したいのであれば、サステナブルにならざるを得ない。現在サステナブル化を強力に推し進めている企業は、このことを悟っているのだと思います。
ということで、エコファッションだけをフィーチャーするイベントは遠くない将来必要がなくなるだろうと思うので、今この時期にメッセがエコファッションショーを買収したことに驚いたのです。
メッセは以前からサステナビリティに力を入れていて、フランクフルトのインテリア繊維展示会"ハイム・テキスタイル"や、パリとニューヨークで開催されるアパレル繊維展示会"テックスワールド"ではサステナブル繊維を強く押し出し、カナダのバンクーバーとメキシコのメキシコシティでは"廃棄物&リサイクル見本市"を開催しています。
よって、同社のサステナブル戦略の一環として今回のエコファッションイベント買収に踏み切ったのだと思います。
アメリカはビジネスのテンポが速いので上記のような動きが既に起こっていますが、ヨーロッパやアジアはもうすこし時間が必要なのかもしれませんし、そういう意味では、今回の買収はサステナブルファッションの認知度向上には非常に有益ですのでとても良いことだと思います。
今後、同社の下でエシカルファッションショーやグリーンショールームがどのように発展していくのか、期待したいと思います。
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