2011/07/12

家庭用洗剤・化学メーカー大手のSCジョンソン、自社エコマーク訴訟、使用停止で和解

カビキラーやジャバ、テンプルなどの家庭用洗剤・日用品を製造販売するメーカー、ジョンソンの米法人SCジョンソンが、独自に開発・採用していたエコマーク「グリーンリスト」に対する集団訴訟で和解、同マークの使用を停止することを発表しました。
(SC Johnson)

「グリーンリスト」とは、2001年に同社が独自に開発した環境・人体への安全基準で、3=ベスト(最良)、2=ベター(良い)、1=アクセプタブル(許容範囲)、0=代替品がない場合のみの限定利用、の4段階で製品原料を評価するものです。
これを社内の原料評価基準として使用しているだけであれば問題なかったのですが、同社が2008年以降「グリーンリスト原料」という言葉とともにエコを彷彿させる緑色のロゴを商品に表示したために、訴訟に発展したのです(SC Johnson)。


このマークは、単なる同社独自のエコ基準に過ぎませんが、一見、第三者機関による認証マークのように見えます。
そのようなマークを商品に表示すれば、他社製品よりも環境にやさしいかのような印象を消費者に与え兼ねません。

そのうえ、4段階の評価測定基準が不透明で、どのような基準で3=ベストや2=ベターの評価が決まるのかは公表されていませんでした。

また、マークを表示する商品の選択基準も不透明でした。
ウィンデックスという掃除用洗剤ブランドのみにグリーンリスト・マークが表示されていましたが、そのブランドが社内のグリーンリスト測定で最も高評価を得たという情報は公開しているものの、測定値は公表されておらず、使用されている原料が評価3なのか0なのかも発表されていませんでした。
08年の同社プレスリリースでは、グリーンリスト導入以降同社製品の揮発性有機化合物(VOC)使用量が減った点やグリーンリストの概要を紹介しているのみで、意図的に詳細を隠していると捉えられても仕方のない内容でした。

グリーンリスト・マークが表示されていたウィンデックス・オリジナルの原材料は、以下の通りです。

・水
・イソプロピル・アルコール
・プロピレン・グリコール
・2ヘキソシエタノール
・水酸化アンモニウム
・ミラポール・サーフS210(ポリアクリル酸塩)
・ヴァイデットEGM(高分子界面活性剤)
・ナトリウムC14-17スルホン酸アルキル
・リキティント・スカイブルー(着色剤)
・香料(詳細は未公表)

界面活性剤が使われているものの、ヴァイデットEGMはVOCの代用となる成分であり、リキティントは環境負荷削減努力をしている着色剤とされているので、同社が環境負荷削減に取り組んでいることは理解できますし、グリーンリストのシステム自体が良くないわけではないと思います。
ただし、原料表示を同社ホームページ上ではなく別のサイトを作って掲載していることや、香料の詳細が公表されていないなど、透明性が徹底していない面は否定できません。
また、水や酢のみで作られた洗剤や植物性界面活性剤のみを使用している洗剤などと比較すれば、決して環境にやさしいとはいえないでしょう。
にもかかわらず、環境にやさしい商品であるように見えるラベルを表示したのは、自社製品の優位性が高いように見せかけるためと捉えられても仕方ありません。
自社努力を表明したいのであれば、少なくとも同社比でVOC何%削減と記載するに留めるべきだったと思います。

当訴訟は、09年にカリフォルニア州とウィスコンシン州の個人により起こされたもので、争点は、グリーンリストマークが第三者機関の認証ではなく社内基準であることを明瞭にしていない点、マーク表示により環境にやさしい原料が使用されているかのような誤認を招く点に関してでした。
訴訟を起こしたカリフォルニア州の個人は、10年にウォールストリートジャーナル紙のインタビューに答えており、当訴訟をクラスアクション(集団訴訟)に発展させ、他社製品より50%高い金額を支払ったことへの返金と共に、同社が今後誤認を招く行為を行わないよう要求すると語っています。

ジョンソン社は和解の詳細内容は明らかにしていませんが、和解理由として”訴訟によりロゴが意味するものをより明確に表す必要があると認識したこと”、”グリーンリストは同社製品のグリーン化にとって良い仕組みであるが、一商品に貼付したロゴのために消費者の混乱を招きたくないこと”の2点を挙げています。

アメリカは、エコをマーケティングに利用し、エコではないのにエコであるかのように見せかける”グリーン・ウォッシング”に厳しい国です。
米連邦取引委員会(FTC)では、環境にやさしいことを訴求する広告宣伝に関する規則を明記した「グリーンガイド」を発行し、不当な広告宣伝を規制しています(NYGreenFashion)。
このようなガイドが発行されたのも、グリーンウォッシュ行為が非常に多いからです。
オーガニックでないのにオーガニックと明記するケース(NYGreenFashion)や、環境優位性が認められないバンブー素材が環境にやさしいと訴求するケース(NYGreenFashion)などがあり、いずれも訴訟やFTCの規制対象となっています。

日本では「グリーンガイド」のような規則はありませんが、だからといってグリーンウォッシュが少ないというわけではないでしょう。
むしろ、アメリカで行えば厳しく追求されるだろうと思われるケースを多く見かけます。

アメリカでは、個人が独自の意見を持ち、同様の見解を持つ人と団体を結成して企業や政府の行動を厳しく監視する仕組みが確立しています。
一方、日本では、和を尊重する、口に出さずに空気を読むのを良しとする、出る杭は打たれるといった文化により、こうした行動が発展し難いのだと思います。

アメリカのやり方が常に正しいとは思いませんし、日本の良い文化や慣習は守るべきと思いますが、企業がこうした活動を見習い率先して透明性を高め、個人が問題意識を抱いて疑問点を企業や自治体に問い合わせるといった積極的な行動をするようになれば、日本らしいサステナブル社会が構築できるのではないかと思います。

環境問題は化・科学的な領域が多いので理解するのが難しいですが、自身の健康や子供たちの将来に大きな影響を及ぼす分野なので、規制を待つのではなく、各人が自ら積極的に情報を得て行動に移すと良いのではないかと思います。

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