ティンバーランドは、サステナビリティ分野におけるリーディングカンパニーのひとつと見られている企業。
「人々に変化を起こさせる」ことをミッションに掲げ、グリーンインデックスという独自の指標で商品の環境負荷を測定、靴の箱に「栄養表示」として測定した負荷を表示、全社挙げての温室効果ガス削減対策(06年対比38%削減を実現)など、さまざまな環境・社会問題対策を行っています。
一方、VFコーポレーションはラングラー、リー、セブン、ヴァンズ、イーストパックなど20以上のブランドを抱える大手アパレル企業。
当然CSR対策は行っているものの、その内容はあくまで投資家向けと思われるもの。
2008年頃のグリーンブームの時期には、いくつかの傘下ブランドでオーガニック・リサイクル素材を積極的に取り入れていたものの、現在はサステナブル素材の商品はほとんど見られず、2005年に買収したReefという傘下ブランドで"Reef Redemption"というサステナブルイニシアティブを立ち上げたものの、こちらも現在は休眠状態。
多くのアウトドアブランドがサステナビリティに力を入れる中、傘下のノースフェイスでは、サステナブル活動を行ってはいるものの真剣味が感じられず、逆に売らんかなの姿勢が強く現れているように思います。
営利企業である以上仕方ないのかもしれませんが、同社の目標はあくまで業務拡大や売上増加であり、サステナビリティのことなどさほど真剣に考えていないように見受けられます。
VFにとってのティンバーランド買収目的は、あくまで同ブランドの海外実績と靴事業・直販事業の強さをVFのポートフォリオに活かすことであり、同社アウトドア&アクションスポーツ事業の強化(全売上の50%)という目標を実現するための一リソースでしかないのだと思われます。
買収後の同ブランドの売上目標を年10%増と公表していることからも、その様子が窺えます。
カンファレンスコールで、VFのワイズマン社長がティンバーランドの(サステナビリティ)文化を守ると言及していたことが唯一の救いではありますが(同社は買収を繰り返して成長した企業であり、「これまで買収したブランドでも文化を守ったから成功した」のだそうです)、今後、サプライチェーン効率化のため、VFの他アウトドアブランドとソーシングの統合を図ることになると思われ、ティンバーランドがこれまで守ってきたサプライヤー選定基準や工場のアセスメントに抵触することになるのではないかと懸念します。
もちろんVFはグローバルカンパニーですから、ファクトリーコンプライアンスやRSL(禁止物質リスト)はありますが、ティンバーランドのそれとは比較になりません。
また、同社は4半期ごとにCSRレポートを発行してきましたが、今後は難しくなると思われます。
これまでティンバーランドが行ってきた温室効果ガス排出量削減努力(2010年にカーボンニュートラル達成)が、VF傘下でも継続できるのかも疑問です。
さらに、前述のグリーンインデックスなどある程度のコストを掛けているであろうサステナブル施策が、コスト意識の強いVFに受け入れられるのかも心配です。
既に、VFのCFOはティンバーランドのコストを15%削減することを明言しています。
ティンバーランドが経営的に苦しい状態にあったのは確かでしょうが、VFに身売りしたことで魂までも売ってしまったのではないかと、とても心配です。
同社のミッションを貫き、VFの「人々に変化を起こ」してくれればよいのですが、そう簡単には行かないでしょう。
今後のティンバーランドのサステナブル戦略がどう変化していくのか、見守りたいと思います。
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