先日、10日間の座禅・瞑想コースに参加してみたのですが、非常に良い経験でしたので、ご紹介したいと思います。
まず、参加した動機ですが、最近集中力が鈍ってきたように感じていたことと、ニューヨークはエネルギッシュであるがゆえにストレスフルな街でもあり、長く住んでいると心の疲労が溜まるので、簡単にできるストレス解消法を探していたためです。
ヨガやピラテスなどは以前からできる範囲でやっていましたが、体や心はすっきりするものの、何か物足りない感じがしていました。
自分で手軽できることはないかと探していたところ、近頃アメリカは“マインドフルネス”流行り。マインドフルネスとは、座禅や瞑想などにより集中力を高める仏教の思想・手法だそうで、グーグルからゴールドマンサックスまで多くの企業で取り入れられており、メディアでも度々その効果が論じられていました。
とりあえず瞑想をしてみようと、本やネットでやり方を勉強してやってみました。目を閉じて呼吸に集中したり、沸いてくる雑念を“観察”したり、書かれている通りにやってみるのですが、どうもピンと来ません。1ヶ月ほど、定期的に時間を取ってやってみたのですが、自分のやり方が正しいのか間違っているのか、効果があるのかないのか、よく分かりませんでした。
そこで、きちんと教わろうと思い、クラスを取ることにしました。
オフィスの近くにも瞑想センターなるものがあるのですが、数時間のクラスでは大して効果がないのではと思い、思い切って友人に勧められた10日間の泊まり込みのコースに参加することにしました。
どのコースも数ヶ月先まで満員で驚きましたが、キャンセル待ちに2度ほど登録すると、運よく空きが出て参加できました。
私が参加したのはデラウエア州にある瞑想センターですが、非常に規則が厳しく、参加するのにかなり勇気が要りました。
スケジュールは、朝4時起床、夜9時半就寝。食事の前後に30分~1時間の休憩、瞑想の合間に5~10分のトイレ休憩があるものの、4時半から9時までの間に10時間瞑想し、夜7時から1時間授業が行われます。
期間中は、家族を含め外部との連絡は一切遮断。食事はすべてベジタリアン(乳製品はOK)で夕食はフルーツとお茶のみ。3~5人の相部屋ですが、他の参加者と接触・会話・目を合わせることは禁止。ヨガも含め運動や読書や文章を書くことも禁止(ストレッチは可)。もちろん飲酒やタバコ、薬も一切禁止。肩や手足が露出する服装も禁止。携帯やパソコン、本などは初日に全て没収されます。ただし、質問や用事がある時に限り、瞑想を教える先生や運営者と小声で話をして良いことになっています。
前日の昼3~5時に受付、5時から夕食、6時からオリエンテーションで、それ以降は会話や接触が一切禁止になります。6時までは参加者との会話や接触が許可されています。
いったいどんな人が来るのかと少し怖かったのですが、話してみると皆普通のアメリカ人でした(コースは男女別なので全員女性、欧州、南米、アジアからの移民もいました)。年齢は20代から70代まで幅広く、独身の方も結婚している方も小さいお子さんがいらっしゃる方も、仕事をしている方も主婦の方も就職活動中の方も色々で、車から察するに(プリウスやベンツのコンバーチブルから、今にも壊れそうなオンボロワゴンまで) 所得層もさまざまでした。参加者は15人ほどで、1人を除き全員が瞑想初心者でした。
毎朝4時に起床し、4時半から部屋か大広間で瞑想することになっていますが、さすが自由なアメリカ人、4時に起床する人はほとんどおらず、ほとんどの人が半分寝ながら部屋で瞑想していたようです。その後、大広間での共同瞑想、自由な場所での個別瞑想が交互に続きます。
戸外での瞑想は効果が薄いので推奨されませんが、瞑想の時間に外で散歩したり、部屋で昼寝している人もいました。休憩時間には、庭に出たり昼寝したり自由に過ごして良いことになっていますが、労働や運動は禁止です。庭の落ち葉を集めてアート作品を作ろうとした人がいましたが、労働になるとのことで中止させられていました。
戸外での瞑想は効果が薄いので推奨されませんが、瞑想の時間に外で散歩したり、部屋で昼寝している人もいました。休憩時間には、庭に出たり昼寝したり自由に過ごして良いことになっていますが、労働や運動は禁止です。庭の落ち葉を集めてアート作品を作ろうとした人がいましたが、労働になるとのことで中止させられていました。
食事は、朝食はパンやフルーツ、ヨーグルト、シリアルなど、アメリカのホテルで出る普通の朝食です。オーガニックのものも結構ありました。昼食は日替わりで、インド料理、メキシカン、和食と色々。夕食はフルーツとお茶のみ。ベジタリアンの食事に耐えられるか心配していたのですが、とてもおいしく、何も問題ありませんでした。
大広間では、座布団が一枚とその下に二つに折った座布団がもう一枚、人数分用意され、座る場所が指定されます。
座り方や呼吸の仕方に指定はなく、普段の自然な呼吸法と辛くない座り方を自分で見つけるようにとのこと。深く呼吸したり、手で輪を作ったりする必要は一切ないそうです。日本の禅道場のように、動くと叩かれることもありませんが、なるべく体を動かさないように指導されます。
広間には自由に使って良いクッションや毛布などが多数用意されており、アメリカ人は普段床に座る生活をしていないため座布団二枚では辛いようで、分厚いクッションやら毛布やらでお城のようなスペースを作っていました。それでも辛い人や高齢の場合は、了承を得て、背もたれのある椅子や座椅子を使って良いことになっています。
初日は、目を瞑って呼吸に集中するよう指示されます。次々と雑念が沸き集中できませんが、とりあえず努力はします。
2日日は鼻の感覚に集中します。痛みや痒みやくすぐったさなどどんな感覚があるかを観察します。反応せず、ただ観察するのが大事とのこと。時々痒みなどを感じることはありますが、この日も雑念が強く集中できません。
3日目は、鼻と口の間の部位に集中するように指示されます。ここは鼻よりも鋭敏なのか、慣れてきたからなのか、色々な感覚が感じられます。それでも、雑念は多く沸いてきます。
4日目からが本格的なスタートで、全身の感覚に集中するよう指示されます。頭のてっぺん、後頭部、顔、首、肩、右手、左手、胴の前部、後部、右足、左足と、上から順に特定部位にしばらく集中して感覚を観察し、次は逆に左足から頭のてっぺんへと繰り返します。これを何度か繰り返した後、頭全体、胴全体と一度に集中する部位を広げて行き、最後に頭の先から足先へ、足先から頭の先へと流して集中します。この間、絶対に体を動かさないよう指示されます。
それまで3日間なるべく体を動かさないようにしていましたが、1時間全く体を動かさないでいることはとても辛く、痛みと痺れで体が分解するかと思うほどでした。ところが、それを超えると痛みの感覚がなくなり、その後は体を動かさないことが苦ではなくなりました。この日から、雑念がほとんどなくなり、体の感覚が鋭敏に感じられるようになりました。
5日目以降は、ひたすらこれを繰り返します。日ごとにどんどん雑念がなくなり、集中力が高まりました。集中→感覚の発生→観察→感覚の消滅→全身流すを繰り返しますが、次々と色々な感覚が出てくるので、瞑想中はすごく忙しい感じでした。
個人的には、これは瞑想というよりも、瞑想しながら“気”の流れを整える手法なのではないかと思います。
理論としては、体や心の問題は過去のさまざまな経験により心の膿が溜まることで起こるものであり、その膿は無意識的に痛みや痒みやくすぐったさなどの感覚として表面に現れているが、多くの人はそれに気付かない、瞑想により気付き観察することで膿が消え、体や心の問題もなくなる、また、反応せずに観察する癖がつくことで、日常生活で問題が起こっても平静を保てる、というようなことでした。このあたりになると科学的には証明できないことですので、正しいのかどうかはわかりません。
帰宅後の効果としては、集中力がかなり高まったように感じていますし、嫌なことがあってもあまりイライラしなくなったように思います。もちろん、計測できませんから感覚でしかありませんが。
また、コース中にずいぶん体が軽くなりました。恐らく、体を動かさずにひたすら座っているので食べ物を消化できなかったのだと思いますが、最初の3日間で頭痛や吐き気、下痢、嘔吐があり、4日目以降は食事の量が減りました。他の参加者も、2~3日目に嘔吐した人が多かったようですが、悪いものが出ているだけで心配不要だと言われました。コース終了後も、なぜか食べ過ぎることがなくなり、体がすっきりしています。
ただし、帰宅後はコース期間中と同じような鋭敏な感覚で瞑想をすることはできません。10日目の昼から、普通の生活に戻るための準備として、他の参加者との会話や目を合わせることが許可されるのですが(接触は最後まで禁止)、ほんの少し話しただけなのに、それ以降、明らかに集中力が落ちました。
継続が大事だそうで、コース終了後も朝夜1時間ずつ瞑想するよう推奨されていますが、忙しい日常生活で瞑想に2時間を費やすことはなかなかできませんし、コース中ほどの集中力が出ないので瞑想の途中で飽きてしまいます。
継続が大事だそうで、コース終了後も朝夜1時間ずつ瞑想するよう推奨されていますが、忙しい日常生活で瞑想に2時間を費やすことはなかなかできませんし、コース中ほどの集中力が出ないので瞑想の途中で飽きてしまいます。
それでも、仕事中はかなりの集中力向上が見られますし、帰宅後に会った友人には何かが吹っ切れたように見えると言われたので、他人から見ても変わったとわかるのかもしれません。
さすがに10日間他人との関係を一切絶ち、1日10時間も自分の体の感覚にだけ集中していれば、心身に何らかの影響はあるのだろうと思います。
さすがに10日間他人との関係を一切絶ち、1日10時間も自分の体の感覚にだけ集中していれば、心身に何らかの影響はあるのだろうと思います。
ということで、思い切って参加して良かったと思っています。もし瞑想に興味をお持ちの方、自分なりに瞑想をしているけどよく分からないという方がいらしたら、10日間集中コースをオススメします。私が参加したのは、こちらのコースです。日本でも開催されているようです。
0 件のコメント:
コメントを投稿