2011/06/23

CSA(地域支援型農業)、春夏シーズンが始まりました

私が加入しているCSA(Community Supported Agriculture:地域支援型農業)では、昨日から春夏シーズンが始まりました。
今年は例年より3週間ほど開始が遅いです。ニューヨークの気候が変わってきているのかもしれません。


昨日頂いた野菜は、レタス1株、ケール1パウンド(約450g)、ラディッシュ5個、葉つきにんにく2本、にんにくの芽(茎)8本、春たまねぎ4本、ビーツ3個、です。
シーズン初期なので少なめですが、それでもかなりの量です。
ケールなど大きな葉野菜は嵩があり冷蔵庫内を占拠してしまうので、頂いた日に調理し保管します。
夏の盛りになるとさらに量が増えるので、野菜中心の食生活になります(オーガニック食=ベジタリアンと思われている方が日米共に少なくないようですが、全く異なる概念です。この件についてはまた後日)。

CSAというのは、地域全体で近隣農家をサポートするシステムで、会員が農家にシーズン前にまとめて料金を支払い(350-600ドル程度)、シーズン中は週に一度採れた野菜を頂けるという仕組みです(詳細はこちら)。
農家側は事前入金により借り入れせずに雇用や農具購入することが可能になり、いわゆる"規格外"の野菜も廃棄せず会員に配布できます。
一方、会員は地元のおいしい採れたて野菜を頂くことができます。
天候の関係で毎年収穫量の増減はありますが、農家を支援することが目的ですから、収穫が少なくても仕方ありません。
背景にある考え方として、自分の代わりに農家の方に野菜を栽培して頂き、自分は他のことで社会に貢献する、つまり互いに協力し合って地域を支え生きていくという概念があるのだと思います。


CSAでは、その時々に農場で収穫されたものを頂くので、どの野菜を頂けるかは分かりませんし、欲しい野菜を希望することもできません。
必要な野菜はスーパーマーケットで買い足せばよいですし、食べたことのない野菜を頂くと新たな発見があり、料理のレパートリーも増えるので、私は寧ろありがたいと思っています。
最適な時期に地元で採れた野菜を食すのが一番おいしく、自然の摂理にも適っていると思います。
最も良いのは、皆が家庭菜園や市民農園などで自給自足するようになることですが、土地や技術的な問題により簡単に実現できませんので、まずはできる限り多くの方がCSAを利用すべきだと思います。
どうしてもCSAを利用できない場合は、ファーマーズマーケットで購入すれば地元農家の支援に繋がります。
それも難しい場合はスーパーで購入することになりますが、大型スーパーは以下のように環境・社会面で色々と問題があります。

・遠方から商品を運搬することによる温暖化ガス排出量の増加。
・低価格化による地元の小規模店舗の閉鎖。
・大量生産による生態系破壊、労働基準の低下。
・野菜よりも安い缶詰や調理済食品を消費することによる健康被害。
・熟れていない状態で出荷され店内で熟すのを待つことによる食品の品質低下。
など。

上記のような理由で、CSAやファーマーズマーケット支持者の中には大型スーパー(オーガニックスーパーでさえも)を強烈に批判する方もいらっしゃいます。
問題が多いとはいえ、私は大型スーパーにも存在意義はあると思います。
オーガニックフードを世に広める役割を果たしたホールフーズなどの活動は素晴らしいですし、近隣の小規模店で手に入らない稀少な商品はスーパーに頼らざるを得ません。
適切な経営方針の下に運営されているスーパーマーケットであれば、支援すべきだと思います。
アメリカや日本はあまりに安易にスーパーマーケット(日本ではコンビニも)に頼り過ぎているように感じるので是正は必要だと思いますが、CSA中心の生活で不足分をスーパーで補足というように、うまくバランスを取っていくのがサステナブル(持続可能)な在り方だと思います。
最近では、スーパーマーケットがCSAの分配場所として名乗りを上げるなど、CSAとスーパーの共存が実現しつつあります。

また、CSAでは、野菜は家に宅配されるのではなく、近隣の教会や集会所にまとめて届くので各自取りに行きます。
ただ取りに行くだけでなく、その際の荷降ろしや分配作業は会員が交代で行います。会員はシーズン中に数時間必ず何らかのボランティア作業を行うよう義務付けられています。
何年か前、ブルックリンのCo-op (CSAではなくCo-op(生協)ですが、アメリカではCSAと同様に会員が交代で運営業務をします) でベビーシッターにボランティアをさせた人がいたというニュースが話題になりましたが、アメリカのコミュニティ(地域)意識がよく表れているように思います。
会員本人が運営に参加することに共同運営の意義があるのであり、それに賛同できないのであればファーマーズマーケットやスーパーで購入すればよいということです。
忙しくて時間がないからできないとか、お金を払って誰かにやらせるというのは、CSAの趣旨に合致していないのです。
また、多くのCSAでは低所得者向けの割引制度や分割払いが用意されています。
これらは、年収に応じて異なる会員価格を設定したり、NPO団体やファンドなどとの協力によって賄われます。
これも、コミュニティで助け合っていこうという考えによるものです。
大都会のニューヨークでさえもこうした助け合い運動が行われているというのはなかなか面白いことですが、寄付やボランティア精神が根付いているアメリカならではの活動だと思います。
実はCSAは日本やドイツが発祥とされていますが、日本ではまだあまり知られていないようです。
日本は生協や野菜宅配サービスがあるからCSAは不要と仰る方もいらっしゃるのですが、上記のようにさまざまな点で異なります。
最近は日本でCSAを始めるグループが徐々に増えているようですが、より多くの家庭がCSAで野菜を購入するようになれば、失われつつある日本ならではの和の精神も再生できるのではないかと思います。


契約している農家にも拠りますが、私が加入している農家さんはNOFA(北東オーガニック農業協会)のオーガニック認証を得ています。
昨年、加入している農家さんを訪問してきましたが、代表のZaidさんは農務省やコーネル大学で農業の研究をしてきた方で、農薬の毒性に疑問を感じ自身でオーガニック農家を経営するようになったのだそうです。
直接色々とお話を伺いましたが、しっかりとした考えを持っている方なので、安心してこちらの野菜を頂いています。
ちなみに、USDAでの職務経験がある彼がNOFA認証を選んだのは、USDA認証の仕組みが複雑で高額だからだそうです。オーガニック認証システムには色々と問題があります。

現代社会では、遠くの知らない誰かが作ったものを買ってあげる、お金さえ払えば何をしても良いといった消費者ありきの考えが浸透してしまっているように思います。
本来なら、CSAの考え方の発展形として、自分の代わりに地球上の誰かが作ってくれたものを有難く頂き、代わりに自分は地球上の誰かのためになる行いをし、互いに協力し合って地球を支えていくという生き方をすべきだと思います。

CSAの良さを認識し、日本でも広めて頂けたら幸いです。

2 件のコメント:

  1. 今年の7月にニューヨーク近郊に越してきたものです。
    アメリカの食の安全性について疑問をもち、調べていくうちにこちらのブログに辿り着きました。貴重な情報を日本語で読めるのはとてもありがたいです。
    近くのCSAを探してみたいと思います。
    これからもちょくちょく覗かせていただきます。
    応援していますね。

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    返信
    1. コメント、ありがとうございます。
      もしお近くにCSAがないようでしたら、ファーマーズマーケットで購入するのも良いと思います。どちらも地域の農家をサポートすることになりますので。
      アメリカの食の安全に関しては、新著(http://bit.ly/1fmTFJd)で詳しく説明しています。全米の紀伊国屋さんでお取り寄せできますので、ご興味あるようでしたらご覧になってみてください。ウエブサイト(nygreenfashion.com)でも、アメリカの持続可能な生活に関する情報を発信しています。
      応援頂き、ありがとうございます。良い社会を作っていきましょう。

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