環境先進企業として知られる、アウトドア・アパレルのパタゴニア。
一昨年の年末商戦では、不要な消費を抑えるため、自社の製品を「買わないで」と主張する新聞広告を出したほどです。その広告には、”モノを生産するには大きな環境コストがかかることを知ってほしい、それはパタゴニアの製品だって同じこと、だからモノを買う前に必要かどうか考えて欲しい”と記されていました (パタゴニアがサイバーマンデーに送付したメルマガの内容)。
メディアや消費者はこの広告を大絶賛し、パタゴニアの人気は急上昇。皮肉なことに、「買わないで」と訴えた同社の売上は、その後1年で前年比30%増加しました。
その後も、「責任ある経済」キャンペーンを展開するなど、経済成長を前提とする資本主義を変えていこう、と主張してきた同社。
ところが、本日届いた同社のメルマガには、「3つ以上買うと20%引&送料無料」の文字が。
この消費主義の象徴のような手法を、まさかパタゴニアが行うとは、しかも、1つならまだしも3つに設定するとは思いませんでした。
但し、どの製品でも3つ買えばよいのではなく、同社が指定したスノボ&スキーとクライミング用ウエアの男女各50点以上の製品の中から、ベースレイヤー(アンダーウエア)とシェルレイヤー(ジャケット・コート)の2タイプを含む、3つ以上の商品であること、が条件となっています。
同じ商品を色違いで3つ以上購入して20%オフになるよりはましですが、それにしても、「責任ある経済」を舵取りする企業が行うべきことではないように思います。
その年の急激な売上増により、それ以降の売上予測を見誤り大量に在庫を抱えてしまっているのでしょうか。
あるいは、創業者のイヴォン・シュイナード氏が、徐々に他の方に経営を任せ始めていることが原因なのかもしれません。同氏は、現在でも米環境関係者から多大な尊敬を得ていますが、近年は年齢のせいか、講演やインタビューなどで質問が聞き取れなかったりすることもあり、そろそろ引継ぎの時が迫っているようにも見えます。彼が退いてもパタゴニアの理念を全うすべく準備は進めているようですが、昨今の販促を見る限り、同氏の志と実際のビジネスの矛盾が乖離していかないか心配になってしまいます。
ビジネスである以上、売上・利益の追求は必要ですが、守るべきものを守らなければ、次世代に禍根を残すことになるでしょう。
同社が言うように、どうやってそれを実現するのかはまだ誰もわかっていませんし、だからこそ、それを皆で検討するために「責任ある経済」キャンペーンを打ち出しているのだと思います。
サステイナブルなビジネスがどうあるべきかを事業によって世に示し、企業の責任と資本主義の在り方を問い続けている同社なのですから、安易な販促に走らず、引き続き社会の手本となる行動を続けて欲しいと思います。
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