「Recreate NY-Home Buyout(ニューヨーク再生:住居買取)」と名付けられたこの計画は、特に被害が大きかった沿岸部一帯を州がサンディ以前の価格で買い取り、更地にするというものです。
この時点ではまだ予算額は明示されていませんでしたが、その後NYTimes紙の調べで、510億ドルの連邦復興予算のうち、4億ドルがこの計画に充てられる予定であることが判明しています(NYTimes)。
演説の中で、アンドリュー・クォモ知事は次のように述べています。
「被災地を訪問した際、多くの方々が、過去数年の間に何度も深刻な洪水被害に遭い、これ以上同じことを繰り返したくない、家を売却したいと言っていました。」
「これらの地域は自然界の所有物なのでしょう。数年に一度、母なる自然が帰るべき場所に帰ってきているだけです。こうした地域に住む方々が高地に引越したいと考えるのは、賢い選択といえるでしょう。」
サンディ直後は、「リトリート(退去)」という言葉は禁句とされていました。
海岸沿いに住みたい方々は多くいらっしゃいますし、世論は、それを否定すべきではないという論調でした。
しかし、そうも言っていられない状況だと判断されたのでしょう。
実は私も、サンディの後、スタテン島南東部の最も被害が大きかった地域を訪問したのですが、状況を見て驚きました。
家が、沼の中に沈んでいるのです。
スタテン島は、元々湿地が非常に多かった場所です。
それを埋め立てて家や建物が建てられているのです。
そして、近年は市が島内の多くの地域を買い取り、湿地の再生に取り組んでいました(これについては現在執筆中の本に詳しく記載しています)。
そのため、沈んでいた家の周辺も湿地だらけでした。
恐らく、残っていた家の方々は、市の買取提案を拒否なさったのでしょう。
サンディ後の今は、被害の大きかった地域の住民165世帯中133世帯が州に売却することを賛成しているそうです(NYTimes)。
私にとっては、なぜ湿地に囲まれた場所に今まで住んでいたのか、なぜここに家を建てることが許されているのかと、ただただ驚くばかりでしたが、やはり海岸近くに住むことは魅力なのでしょうし、こういう場所ですから安かったのかもしれません。
また、サンディの被害がそれほど大きくなかった内陸部の地域でも、すぐ側まで湿地が迫っている家がたくさんありました。
恐らく内陸部は州の買取計画に含まれないでしょうが、いずれこうした地域に対する支援も問題になってくるのではないかと思います。
人間も人間が作った物も、自然に対して脆弱です。
自然の法則に逆らって人工物を作っても、元に戻ろうとする力が働くだけです。
人間はその力に打ち勝つことはできないでしょう。
こうした事実に、政府高官をはじめ多くの方が気付き、対策を取り始めるようになったのは、サンディの功績といえるのでしょう。
湿地に囲まれた場所で、家が沈んでいる風景は、今でも胸に焼き付いて離れません。
クォモ知事が仰るように、ようやく自然が帰るべきところに帰ることになったのだと思います。
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