2012/06/21

震災被災地の現状

先月、2年ぶりに1ヶ月間、日本に出張に行きました。

滞在中にご縁があって、岩手県大槌町への震災復興ボランティアツアーに参加させて頂きましたので、所感を記しておきたいと思います。

正直なところ、海外在住の私にとっては、震災に関しては原発のことしか頭にありませんでした。
しかし、現地を訪れ、改めて津波被害がいかに甚大であったかを思い知らされました。
当時の映像を何度も見て被害の大きさは認識してはいたはずなのですが、アメリカで報道されることの多いハイチ地震やカトリーナ被害などと比べると、日本は人々の意識が高く裕福な国なのだから、お金で解決し得ない原発はともかく、津波被害の復興は進んでいるのだろうと思っていました。




ところが、1年以上経った現在でも、基礎部のみが残る海岸沿いの住宅跡地、津波の爪痕が色濃く残る建造物、そして、被災地の方々が復興に向けて必死に取り組み、精神的な傷と戦っておられる姿を目の当たりにし、自分の認識の甘さを痛感しました。




ツアーの案内役を務めてくださったNPOの方のお話では、同じ被害が起こる可能性のある海岸沿いの低地では、家を建て直すこともできず、自治体が地域一帯を買い取る計画はあるものの、各戸の査定に時間が掛かり、何も進んでいない状況とのことでした。
自力で他地域へ移住したり、借金を背負って家を建て直している方もいらっしゃる一方、現在でも仮設住宅で暮らす方は多いとのことでした。
被災者の就労状況は、当地では漁業や水産加工が主でしたが、流された工場の再建の目処が立たず、また、岩手は原発から東京とほぼ同じ距離にあるにも関わらず、原発の風評被害で漁業が成り立たないため、漁業組合は今年初めに債務超過で経営破綻したとのことです。

もともと、若い人材が都会へ流れ、過疎化が進んでいた地域であったこともあり、金銭面だけでなく人材確保の難しさも再建を阻む大きな要因となっているようでした。
逆転の発想をすれば、震災で注目されている今が町興しのチャンスといえないこともないのでしょうが、直近の稼ぎ口と心の傷と闘っている子供たちの将来を考えると、そう簡単に言い切ることはできないようです。
それでも、希望を胸にNPOの立ち上げや起業される方々、いち早く事業を再建された方々もいらっしゃいました。


もうひとつの問題は、瓦礫の処理です。
NPOの方のお話では、放射性物質量は基準値以下であるにも関わらず受け入れ先がないそうで、仕分けされた瓦礫や流された家財が海岸沿いのあちこちに山積みになっていました。
阪神大震災の時には、瓦礫が片付いたときに現地の方が復興を感じ始めたそうですが、今回は原発の問題があり、簡単にはいかないのかもしれません。

 また、今回の訪問でとても印象的だったのが、東北の自然の美しさです。
山と海に囲まれた大自然の美、昔ながらの茅葺屋根が残る伝統的な民家など、日本各地からのみならず、海外からも観光地として訪れる価値があると感じました。
それを復興の手段として大いに活用すべきなのかもしれません。

そして、もう一点言及しておきたいのは、現地の方がボランティアに対して非常に好意的に対応して下さったことです。
たまたまツアーを引率して下さったNPOの方が、足繁く現地に通い、現地の方と密接な関係を築き上げていたこともあるのだと思いますが、どの場所に行っても「ボランティアさんですか、お疲れ様」と暖かく迎え入れて下さいました。
週末2日間のツアーだったので、ボランティアらしき活動は大して行うことができませんでしたし、行く側も迎える側もそれは承知のうえだったと思います。
それでも、暖かく迎えてくださったお気持ちに、感謝の念を抱きました。
そして、以前記載した阪神大震災の時と比べると(こちら)、震災直後と1年後という時期の差や当時はボランティア元年であったことなど数々の違いはあるにせよ、日本でのボランティアに対する考え方が大きく進化したことを感じ、とても嬉しく思いました。

最後に、やはり一番強く感じたのは、原発と津波被害は分けて考えることはできない事柄かもしれませんが、それでも、一緒くたにすべき問題ではないだろう、ということです。

今回、訪問させて頂いた場所やNPO団体を以下に記しておきます。
皆さん素晴らしい活動をなさっていますし、観光でも良いので現地を訪れる人が増えることが復興に繋がるとのことでしたので、ぜひ皆さんも訪問・協力なさって下さい。

・浄土ヶ浜パークホテル http://www.jodo-ph.jp/
高台にあるため被災は免れたものの、震災後に被災者や全国から駆けつけた警察の宿泊所としてホテルを提供。
警察の硬い靴底でカーペットが痛んだため、苦しい経営状況の中、地域復興のためと全館リニューアルし、今年3月にリオープン。
窓の外に見える宮古湾と浄土ヶ浜が息を呑む絶景の、素晴らしいホテルです。

・吉里吉里国(きりきりこく):http://kirikirikoku.main.jp/
管理されていなかった人工林に入り、間伐材を販売することで復興を目指し、美しい森を取り戻すとともに、森の再生により豊富な養分を含む水が海に流出し、美しい海も取り戻すことを目標になさっているNPO。
会員・賛助会員を募集されています。

その他、以下の団体が素晴らしい復興活動をなさっています。
・遠野まごころネット:http://tonomagokoro.net/
・おらが大槌夢広場:http://www.oraga-otsuchi.jp/
・立ち上がれ、ど真ん中大槌:http://www.otsuchi.jp/


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