2013/03/22

クラウド時代のファッションの形

かねてから、いずれファッションはウエブ上でオーダーメイドになるだろう(買い手が欲しいもののみを作り販売するようになる)と思っていたのですが、TeePublicにその片鱗を見たように思います。

TeePublicは、クラウドファンディング型のTシャツショップです。
不特定多数の「デザイナー」が、TeePublicのサイトに自分のデザイン(写真も可)をアップロードし、1カ月以内に30人以上の購入希望者を獲得するとTシャツとして製品化され、希望した人たちに販売されるという仕組みです。
一度製品化されると、永続的にそのデザインがサイトに掲載され、販売され続けます。
Tシャツは1枚20ドルで販売され、デザイナーは1枚販売される毎に5ドルのデザイン料を受け取ります。
Tシャツの型と素材は決まっているので、デザイナーはそこに描かれるグラフィックデザイン(色制限なし)と地色(1色のみ)を選ぶことができます。

TeePublicを「ブランド」と捉えるなら、ファッションブランドに「デザイナー」は必要なくなったということでしょう。

Tシャツは型と素材が決まっていますから、グラフィックデザインを印刷するだけで成り立ちますが、より複雑なファッション製品にもこのコンセプトは流用できると思います。

現在では、これほどファッションが大衆化してしまったため、本当の意味で「デザイン」しているファッションデザイナーはほとんどいなくなってしまいました。
どのブランドも毎シーズン新作を出してはいますが、ほとんどの場合、ビンテージ物や他社の製品を参考にして(≒真似して)デザインを起こしているに過ぎません。
独自にデザインするにしても、既に世の中に存在していたデザインから、丈や袖の長さ、ネックやポケットの形・位置、ボタンやジッパー、色などを変えるくらいしかできません。
それをデザインと呼んでも良いのでしょうが、言葉の定義としてはエディティングやスタイリングの方が近いと思います。

以前、こちらの記事(サステナブルファッションの意義と矛盾)にも書きましたが、長い歴史の中で既に考え得るデザインは出尽くし、且つ、人間の体の形とその機能が固定されている以上、まったく新しいデザインを作り出すことなど不可能でしょう。

であれば、企業デザイナーがどこからかサンプルを購入してきてそれを真似た商品を大量に作り、売れずに大量の在庫を抱えてしまうよりも、いっそその役目を買い手に任せ、人々が欲しい商品を作る方が無駄が省けるはずです。

TeePublicとPinterestを足したような形も可能でしょうし、そこにシェアリングの概念を加えても良いでしょうし、セブンリーのように寄付の概念を取り入れても良いでしょうし、色々と新しい形は考えられると思います。

資源不足か気候変動がさらに深刻化し、環境コストが内部化されるようになれば、大量生産・販売の仕組みは成り立ち得なくなるでしょうから、そうなれば、S、M、Lや、2、4、6などの固定サイズでなく、ウエブ試着室やボディスキャナーの技術を活用して、買い手の体型にぴったり合ったサイズの商品が作られるようになるのではないかと思います。

音楽や書籍と異なり、服は着用するものですから、モノ自体がなくなってしまうことはないでしょうが、ファッションとサイエンスの融合も進められていますから、もしかしたら拡張現実が進化して、一見華やかに見えるファッションでも、実際に着ている服は無地のベーシックなものだけという世界になるかもしれません。

いずれにしても、これだけ余剰なファッション製品があり、且つ、環境問題が深刻化しているのですから、遠くない将来、大きな転換が起こらざるを得ないでしょう。
ファッションのサステナブル化(詳しくはこちらで)も少しずつ現実化してはいますが、既存の固定観念に囚われた企業が多すぎ、変化のペースがあまりに遅いので、恐らくそれが行き渡る前に大きな改革が起こるのではないかと思います。

そうなれば、これまで当たり前と思われていたことが当たり前ではなくなり、良いとされてきたことが良くなかったと判明するかもしれません。
正しいことを行う人や企業が評価される正しい社会になることを期待しつつ、ファッション業界の未来予想図を色々と推察してみました。


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